僕は崎山蒼志を聴いたんだ

崎山蒼志16歳。ナードな風貌、シャイな受け答え、はにかんだ笑顔から呼び捨てではなく崎山くんと呼びたくなる。
彼といえばAbemaTV「日村がゆく」に出演し、スカートの澤部渡YOUR SONG IS GOODのサイトウ "JxJx" ジュンを唸らせ、出演回配信後には、Twitterくるり岸田繁ゲスの極み乙女。川谷絵音が好感触な反応を示す。
曲を聴く前にそんなストーリー耳にしたら、いやでもハイプだって思うじゃないですか。「あー、これ完全にメディアにおもちゃにされるやつ、中学生/高校生のちょっと曲できるやつがメディアにおもちゃにされて捨てられるやつじゃん」って思ったんです。10代の頃にロキノンから受けた洗脳がまだ解けきってないので。

とはいえ岸田繁澤部渡というネームにとりあえず聴いてみなきゃと思い、崎山くん出演回を視聴したんですが、良い、良いですよね、五月雨。見た目完全にオタクにカテゴライズされそうなのに、ギター弾きだした途端左手がわちゃわちゃ動いて荒々しい音を奏でるから「え?え?え?」って混乱してたらあの癖のある歌声。もう呆然ですよね、すごくて。「これは良いアーティスト出てきたなぁ、きっとインディでCD出すだろうし追っていかなきゃなぁ」って思ってたら、割とすぐ五月雨を収録したシングルが配信されたんですが、リリース元に記載されているSony Music Artists Inc.で「は?」と。どメジャーじゃないですか。「終わった、セルアウトだ、崎山くんがめちゃめちゃにされる」と思ったんです、10代の頃にPitchforkで叩き込まれたインディ精神が抜けきっていないので。

それでApple Musicで「夏至/五月雨」を聴いたんですが、五月雨とは違うゆっくりとしたテンポに、第二の五月雨を待ち望んでいた僕は「あーこれは一発屋扱いされてダメになるパターンだ」と思いました。
第二の五月雨を欲していた僕はその後五月雨ばかりリピートして夏至を聴かず、その後リリースされた「神経」もやっぱり聴かず、さらには五月雨ばっかりリピートするもんだから五月雨にも飽きてしまった。
2018年の12月にアルバム「いつかみた国」がリリースされた時も、何か怖くて聞けなかったんです。五月雨と比べてがっかりするんだろうなって思って。だから買わずにいたら、2019年の1月にリリースイベントで京都に来るっていうのでせっかくだし生で観なきゃな、せっかくだからアルバム事前に聴いておかなきゃなってことで聴いたんです。...良くないですか?これ?

五月雨はないんです。ないんですよ、どこにも。でも五月雨に込められた激しさみたいなものが、どの曲にも込められてますよ。静かな激しさというかなんというか。「夏至」や「神経」で感じることができたスローで暖かい曲調と前述の静かな激しさが同居していて「国」から「旅の中で」までまとまっている。ただし「龍の子」、てめーはダメだ。
アルバムの収録曲に「塔と海」に「真っ青な海に飛び込んで 知った世界だから 傷つき分からないことだらけで ここまで来てしまった」という歌詞があって、この歌詞が今の彼の状況を反映しているんじゃないかって勝手に思って、グッとくるものがあったよね。高1でこんな歌詞書くなんて化け物じゃん。
で、リリースイベントに行ったんですが、意外とおばさま多いですね。そりゃあシャイな感じがかわいいですし、歌いだした途端に感じるギャップも最高。「静岡県浜松市から来ました崎山蒼志です」というMCと白いYシャツが向井秀徳リスペクトか!?と思わせるところもいい。もちろん曲もいい。ライブの方が熱が籠っていてまた生で観たくなる。「五月雨」もさらに激しくなってて最高。最高!!!!
「いつかみた国」は推せる。自分の年間ベストアルバムに入る。けど「龍の子」、てめーはダメだ。

いつかみた国(DVD付)

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夏至/五月雨/神経

夏至/五月雨/神経